『魂の牢獄で』
2007年 06月 09日
男は魂の牢獄で一人
鉄格子の窓から月明かりだけが
自分は何をしてきたのだろう
ずっと捜し求めてきた
叫んできた愛が
今ほど遠く感じたことはない
つながれた男は孤独で
すでに若くもなかった
世界の暗闇の中で魂の牢獄に囚われ
自分の人生の徒労を嘆く
詩に織り込んでもそれは届かず
心から与えても相手には響かず
こうして一人牢獄に
無力に零れた涙一筋
そっと差し込む月光が頬を撫でる
窓からかすかに風が囁く
牢獄の片隅でクモがこう語る
ここは魂の牢獄
ではおまえのいままではどうなのだ
嘆くおまえの人生と
この魂の牢獄になんの違いがあるというのか
おまえの心が 魂が 絶望が作り出す牢獄
ただそれだけのこと
わたしが自ら吐き出す糸の上を
自由に行き来するように
おまえも心の自由を得るがよい
涙に濡れた男の瞳に一筋の月明かり
手には届かなくとも見ることはできる
こらえ、信じて、それでも愛が遠くても駄目でも
それでも耐えてひたすらに
月光の中に身を置くように
愛の光に身を横たえよう
魂の牢獄にいても
そこから抜け出ても
愛がなければどこも牢獄なのだから
この牢獄の中でさえ月の光が差すと気づいたように
牢獄に自らをつなぐのは
自分自身なのだということを
by superkavi
| 2007-06-09 15:08
| 詩